イヤースピーカードライバーの3段増幅化改造
●経緯
今までの2段増幅では、やはり初段出力インピーダンスの高さがネックとなり、聴覚上でも高域が弱く、途中で少量のクロス中和を追加していました(って載せるの忘れてた)。PCL86フローティングOPT(2段増幅)でも同じような流れでしたが、その後300B全段差動を作ってみると、何というか音の充実感みたいなのがけっこうちがったので、これは球のせいだけではないのでは?という気になり、ベーシックアンプ3段化に倣って、STAXドライバーにも1段追加することにしました。
●設計
構成としては、12AX7 1段によるドライブをFET 2SK30Aと12AU7の直結二段に、合計3段増幅に変更します。2SK30Aは、300B差動と同じくぺるけさんによる選別品を使いました。300B差動用といっしょに2ペア頒布してもらったものです。似たような特性(6DJ8系とか5687系とか)の中で12AU7を選んだのは、ピン配置が12AX7と同じで、配線の変更が最小限ですむからです。何しろ狭くて深いシャーシに詰め込んだので、中が混み合っていていじりにくいのです。
また、電源回路の抵抗値も、もちろん変更になります。実装的には、ここは手を入れやすい場所なので比較的楽でした。
回路図上、赤で書かれている部分が今回の追加・変更部分です。配線から赤い箇所は追加、素子だけ赤いのは変更ということになります。
●製作
思ったとおり、ごちゃごちゃして、新ドライバ段(改造前の初段)はたいへんでした。直立しているカップリングコンデンサをひねってよけてハンダ付けとかそんな感じでした。また、この機会に、PROコネクタの左右間違い(他でつじつま合わせしていた)を修正しました。
初段FETは、いつもどおり(最初のヘッドホンアンプから同じ)IC用ユニバーサル基板を使いました。電源部平ラグのねじ穴にスペーサーを立てて、底板ぎりぎりの高さに固定します。電源ラグは余裕がないので、新初段電源のドロップ抵抗などもいっしょに載せます。電源の1.8KΩ/10Wと10KΩ/10Wは、10Wはでかくてじゃまなので、5Wにしてシャーシにシリコングリスで密着させています。消費電力は2.5Wと2.9Wなので、余裕はないけど範囲内です。
なお、面倒なので、出力段に入れてあったクロス中和用ディップマイカコンデンサはそのままにしてあります。まあ4.7pFなので、効き過ぎるということもないと思います。
作業は集中力を欠きつつ3日かけて無事完了。多少気合いを入れれば、休日なら1日で終わるでしょう。
●調整
だいたい-10dBの負帰還をかけて、とりあえず試聴しました。最初の全段差動オフ会で感じた、ベーシックアンプ(標準2段)とぺるけさんの6AH4GT全段差動(3段)の差と似たような違いは感じられます。いい感じです。やっぱりクロス中和はいらないかなぁ。
ただ、ちょっとおかしな現象がいくつかありました。妙に左右の音量差がでかかったり、サーッというノイズが入ったり、ヘタするとボツボツと発振したり……。球を入れ替えると変化することから、球に起因する問題のようです。
無帰還での各段の電圧と利得を測ってみました(出力の単位はVrms)。
入力信号 | 初段増幅 | 初段出力 | ドライバ増幅 | ドライバ出力 | 終段増幅 | 終段出力 | |
R | 0.10 | 21.1 | 2.11 | 7.4 | 15.6 | 11.4 | 178 |
L | 0.10 | 21.6 | 2.16 | 12.0 | 26.0 | 9.0? | 233?? |
Rのドライバ段がちょっと低すぎです、が、それ以前にLの出力は明らかにクリップしているので、入力を小さくし、球の問題を確認するため左右を入れ替えて再度。
入力信号 | 初段増幅 | 初段出力 | ドライバ増幅 | ドライバ出力 | 終段増幅 | 終段出力 | |
R | 0.02 | 20.0 | 0.40 | 11.5 | 4.60 | 11.0 | 50.7 |
L | 0.02 | 19.5 | 0.39 | 8.8 | 3.43 | 11.3 | 38.8 |
今回追加したEiの12AU7の1本がはずれだったようです。しかたないので、新たに12AU7を、今度はJJを買ってみました。すると0.2V入力で50.4V、51.0Vとほぼ揃ってくれました。深く考えず-12dBほどの負帰還をかけて、完成。やれやれ。
問題がひとつ。電源をオフにすると、1秒ほどがざざざっとノイズが盛大に出ます。初段の動作が先に止まって信号が不定になってしまう……からだと認識しているのですが、どうでしょう。まだ手を打てないでいます。このままじゃ良くないとは思いつつ……。
スイッチ付近のごまかしや、ごついだけの飾り板が気になったので、目の細かいパンチングアルミ板を買ってきて、自力で穴を開けてふさぐことにしました。要所要所に小さい穴を開け、糸ノコで穴をつなぎ、ヤスリで仕上げます。目が細かく薄いので加工そのものは楽なのですが、穴に誘導されてドリルの刃がずれてしまうので、微妙な位置合わせには向きませんね。スイッチ、PROソケットはだいたい合っていたのですが、ボリューム穴が合わず、後から現物あわせで広げるはめになりました。ここのすき間が狭いと格好良いのですが、むずかしいものです。