ヘッドホンアンプVersion 2.0
FETドライブE182CC全段作動プッシュプルヘッドホンアンプ

2002.12.05

Version 1.0 単段、一体型。トランスの誘導ノイズに苦しめられる
Version 1.1 電源部とアンプ部を分割。ノイズ問題解消だが……
Version 2.0 FETを追加し、2段増幅に。ひとまず完成
Version 2.1 出力トランスを豪華に換装


アンプ部と電源部の間は2in-2outラインセレクター、左はベーシックアンプ(この時点で外装のみ)


●回路図

Version 2.0

Ep=120V Ip=12.25mA Rp=5K Eg=-4V

IN>--+                 +------+       +------+         +-->NFB
|    |                 D      |       P      |  8K  8  |
|  VR50K<--+------G<2SK30ATM> +----G<7119>   +---++++--+-->OUT
|    |     |           S     R12K     K          ||||  |
~    ~   R560K         |      |       |          ||||  |
           |  C<--CRD--+ B2>--+  *1<--+    B1>---+||| R27/1W
           ~      2mA  |      |       |          ||||  |
                       S     R12K     K          ||||  |
   NFB>--R510--+--G<2SK30ATM> +----G<7119>   +---++++--+-->OUT
               |       D      |       P      | ITPP-3W |
             VR100     +------+       +------+         ~
               |
               ~

      +--A<LM317T>I--<*1 24.5mA
      |     O
      +-R51-+
      |
      ~

                                                       +-->B1 49mA
   +-SW-+     120V    (151V)   (150V)      (hFE=400)   |(140.5V)         (24.5V)
>--+-SK-+--++++--+->|-+--R20/1W--+------+--C<2SD798>E--+----R13K-R16K--+-->B2 4mA
        |  ||||  +-|<-)+         |      |       B           /1W  /1W   |
AC100V  |  ||||       ||     C100/200  R13K     |                  C100/50
        |  ||||       ||         |      +-------+(141.5V)              |
        |  ||||       ||         |     R18K C220/200                   |
        |  ||||  +->|-+|         |     R240K    |                      |
>-FUSE-+)--++++--+-|<--+---------+------+-------+----------------------+--<E
   1A  || Z-02ES
       ||
       ||     6.3V                       5V
       |+--++++----+--+                  +--|<--+--R100--+--<C
       |   ||||    |  | HEATER                  |        |
       |   ||||    >  > 640mA*2(7119)        C220/16  C220/16
       |   ||||    |  | 900mA*2(5687,7044)      |        |
       +---++++----+--+-------------------------+--------+
          J-632    |
                   ~

-|<-:ダイオード Rxx:抵抗(Ω) Cxx/yy:コンデンサ(μF/耐圧V) ~:アース SW:スイッチ SK:スパークキラー


●ロードライン

2SK30A:ぺるけさんの「6AH4GT全段差動プッシュプル・アンプ」より。青線が今回のロードライン


●電圧の構成


 そんなわけで、初段FETは、ぺるけさんの「6AH4GT全段差動プッシュプル・アンプ」を参考に、出力段直結で入れました。アンプ部としては特になにもなくて、問題は電源部です。

 電源トランス東栄Z-02ESでは、二次側最大120V、個体差なのか実質ちょっと少なく、ブリッジ整流すると151Vぐらいでした。想定するロードラインでは、初段は16.5V(B電源ではなくバイアス+ロードライン基準点)、出力段は124Vで直結なので、B電圧は140.5Vとなり、151Vからの差、10V程度では、Π型フィルターも厳しいし、ましてやマイナス(C)電源を作る余地はありません。

 そこで、リプルフィルターはトランジスタを使い、マイナス電源はヒータートランスから、とします。四苦八苦してトランジスタ・リプルフィルターを、回路図上の整流→抵抗+コンデンサ一の後に入れてみると……机上の計算ではVersion 1.1と同レベルまで減りそうです。すごいなー最初からこうすりゃよかった。まあ計算方法がわかっていなかったんですが。初段のB電源は、ここから普通に抵抗+コンデンサで電圧を落として作ります。マイナス電源は、ぺるけさんの回路ほとんどそのまま、コンデンサ容量を、小電圧で安いからと思って多めにしましたが、やっぱり意味がないです(ソースに対する電圧が数Vになっていさえすればよい)。


電源部の真ん中のネジはトランジスタ固定&放熱用に追加

 さっそく買い出し。2SK30ATMは必要4本に対し16本(@30円)、2SD798は1本に対し4本(@150円)、定電流ダイオードは2本に対し5本(@90円、別件で4本)購入し、測定し、選別します。測定方法もぺるけさんのサイトにあります(定電流ダイオードとFET(Eg=Es時電流)トランジスタ(増幅率)……2SD798ではこの回路を9V電池+直列に100Ωで計測)。すると……なんとなく半導体というと、それなりにきっちりしたもんだというイメージがありますが、よくもまあばらついています。2SK30Aは「6AH4GT全段差動プッシュプル・アンプ」と同じ特性を想定していましたが、2mAを上回るのが16本中4本しかありません(1.7mA〜2.3mA)。

 電源部の2SD798は、ぺるけさんがあくまでも「例題」として設定した「hFE(増幅率)=200」を、しかもそのコレクタ電流もちがうのに鵜呑みにして、回路を設定してありました。買って計測すると、だいたいコレクタ電流59mAで、hFE=420〜470ぐらいです。こりゃいかんということで、hFEが低いものを選び、「コレクタ電流53mAでhFE=400」と決めて、抵抗値を設定しなおしました。実装は手元にある抵抗ででっちあげたので、回路図の[R18K直列R240K]は、実際には[(R470K並列R560K)直列R2.4K]、R13Kは[R8.6K直列R4.3K]だったりします。

 電源部とアンプ部の接続は、前の4種類(B+、アース、ヒーター×2)から2種類(FETのB+とC-)増えたため、コネクタを変えなければ。ここは前回も検討したミニチュア7ピン真空管用ソケットにしました。真空管用ですから、耐圧などにはまったく問題ありません。もちろん普通は真空管がささるのですが、これに対応するオスコネクタ(サトーパーツ製)が東京ラジオデパートの何件かにあったので、これを使います。ちょっと緩いので、メタルコンセント(かな?)にすればよかったかも。


小さい基板が初段と負帰還、出力段のソケットはその裏側。ソケット両側に4P1Lのラグを立て、写真で見て下端のピンに4つのラグを通るようにスズメッキ線を張り(小基板の間、中程に見える)、アース母線とした。出力トランスの片側に大きめの4P1Lラグを立て、トランスからの線はいったんそこに接続。

 製作。初段は、負帰還も含めて4cm四方ぐらいのユニバーサル基板(サンハヤトICB-91)上に作り、これを真空管ソケットの片方のネジに、2cm絶縁スペーサーを立てて固定します(つまり1本足)。この基板1枚だけで7端子あるので、配線はけっこうめんどうでした。

 できあがって、電源を入れると……鳴りました。配線そのものは問題なさそうです。

 B1電圧を測ると……145V? 想定より4〜5V高い……と思ったら、整流直後で154Vあります。なんと。はじめの計測がまずかったのか、電圧が不安定なのか……。まあ動作に問題はありません(実際には、単に手持ちがあったので、整流直後の抵抗を30Ωにした)。しかし、トランジスタリプルフィルター、ちゃんと動作したようでよかった。

 負帰還の調整。ダミーロード……というかヘッドホンをつないで耳にはめない状態で、ヘッドホン端子にテスターを当てます。はじめは可変抵抗を0にして無帰還から、徐々に抵抗値を上げて帰還量を増やす……出力が増えました(笑)。逆です。正帰還です。初段ドレインと出力段グリッドの接続を逆にして、再度、今度はちゃんと抵抗↑=出力↓です。しかし、いっぱいまで回しても2/3ぐらい(≒-3dB)までしか減りません。はじめの時点で負帰還素子は1.8KΩとVR100Ωでしたが、戻し(最大で出力の1/19)が小さすぎたようです。どこかの作例をパクったんですが、てきとーに決めてはいけません。冒頭の回路図のとおり、1.8KΩを510Ωに入れ替え(負帰還量は最大で出力の1/6)、これで可変抵抗を調整、負帰還量6dBになるよう(出力が半分)にして、完成〜。


 出てくる音は、太くて歯切れがよい、「ガッチリ」といった感じでしょうか。それが大きく広がりを持っています。今まで良い(といわれる)音をほとんど聴いてきていませんから、判断の基準や表現は問題ですが、とにかくわたしは良いと思っています。

 まだ「ベーシック・アンプ」ができてませんから、とりあえず小さいボックスを使ってヘッドホン→スピーカーのアダプタなど作ってしまいました。単に線をつないだだけです。音楽を聴くにはちょっと小さい、3時以上までボリュームを上げないといけなくて歪みが出てそうですが、テレビを見るなどにはじゅうぶんです。

 これにて終了。(以下2003.06.01)最終的には、奮発してアムトランスでMullardのE182CCを購入(@2,800円)。常用しています。てことでタイトルも変更。


●部品表

部品名 商品名(例)
*スペック
単価 小計 備考 購入店(例)
RD:東京ラジオデパート
RC:秋葉原ラジオセンター
 
シャーシ(アンプ部) タカチYM-180 930 1 930   エスエス無線(RD2F)
シャーシ(電源部) リードPS-13 1,040 1 1,040 (付属ゴム足(はめ込み)をそのまま使用) エスエス無線(RD2F)
ゴム足 3mmネジ用 15 4 60   鈴喜デンキ(RD2F)
電源部
電源ケーブル 2mプラグ付き 150 1 150   鈴喜デンキ(RD2F)
電源ケーブルの留め   20 1 20   鈴喜デンキ(RD2F)
電源スイッチ   320 1 320   鈴喜デンキ(RD2F)
ヒューズ *1.0A 30 1 30   千石電商B1F
ヒューズホルダー   100 1 100   千石電商B1F
スパークキラー 岡谷電機産業S120033
*150V以上
80 1 80   日の丸無線(RC1F)
トランス(A電源) 東栄変成器J-632
*100V-6.3V 2A以上
860 1 860   東栄変成器(RC1F)
トランス(B電源) 東栄変成器Z-02ES
*100V-120V 100mA以上
1,700 1 1,700   東栄変成器(RC1F)
整流ダイオード 1N4007
*整流用、逆耐圧150V以上
15 4 60 10本150円 1N4007は逆耐圧1000V 千石電商2F
R *20Ω/1W 30 1 30   海神無線(RD2F)
R *13KΩ/1/2W 30 1 30   海神無線(RD2F)
R *18KΩ/1/2W 30 1 30   海神無線(RD2F)
R *210KΩ/1/2W 30 1 30   海神無線(RD2F)
R *13KΩ/1W 30 1 30   海神無線(RD2F)
R *16KΩ/1W 30 1 30   海神無線(RD2F)
C *電解100μF/200V 300 1 300 耐圧200Vが入手しにくい場合は250V 海神無線(RD2F)
C *電解220μF/200V 400 1 400 耐圧200Vが入手しにくい場合は250V 海神無線(RD2F)
C *電解100μF/50V   1     海神無線(RD2F)
TR 2SD798 150 1 150 ばらつきが大きいため多めに購入 鈴商
R *100Ω/1/2W 30 1 30   海神無線(RD2F)
C *電解220μF/16V   1     海神無線(RD2F)
接続コネクタ(メス) MT7ピン真空管ソケット
*6端子以上
  2     瀬田無線(RD2F)
接続コネクタ(オス) MT7ピン型プラグ
*6端子以上
  2     瀬田無線(RD2F)
アンプ部
入力端子 *RCAメス赤白各1 150 2 300   千石電商2F
VRボリューム用 NOBLE RV24YG
*6mm軸50KΩAカーブ2連
1,600 1 1,600   ナリタ秋葉原ラジオストアー
VRボリューム用つまみ *6mm軸 640 1 640 φ4cmアルミ 鈴蘭堂(RD2F)
R *560K/1/2W 30 2 60   海神無線(RD2F)
定電流ダイオード *2mA 90 2 180 ばらつきが大きいため多めに購入 千石電商2F
FET 2SK30ATM 30 4 120 ばらつきが大きいため多めに購入 千石電商2F
R *12KΩ1%/1/2W 30 4 120 1%がない場合は選別 海神無線(RD2F)
R *51Ω1%/1/2W 30 2 60 1%がない場合は選別 海神無線(RD2F)
R *27Ω/1W 30 2 60   海神無線(RD2F)
三端子レギュレータ LM317T 100 2 200   千石電商2F
絶縁シート 三端子レギュレータ+TR用 10 3 30   千石電商2F
ワッシャー 三端子レギュレータ+TR用 5 3 15   千石電商2F
R *510Ω1%/1/2W 30 2 60   海神無線(RD2F)
可変抵抗 *100Ω 200 2 400   海神無線(RD2F)
真空管 7119(NATIONAL) 2,500 2 5,000 2,500円/1本 クラシックコンポーネンツ
真空管 5687(PhilipsECG)       1,000円/1本 クラシックコンポーネンツ
真空管 E182CC(Mullard)       2,800円/1本 アムトランス(RC1F)
真空管 7044(GE)       1,200円/1本 春日無線変圧器(ニュー秋葉原センター)
真空管ソケット *MT9ピン用 360 2 720   クラシックコンポーネンツ
トランス(出力) イチカワITPP-3W
*8KΩ-8Ωプッシュプル用
1,800 2 3,600 1,800円/1個 イチカワ(通販のみ)
トランス(出力) 東栄変成器OPT-10P
*8KΩ-8Ωプッシュプル用
      2,500円/1個 東栄変成器(RC1F)
ヘッドホン端子 *ステレオ 110 1 110   千石電商2F
その他
ユニバーサル基板 サンハヤトICB-91 155 1 155 初段、負帰還 千石電商1F
スペーサー *2cm絶縁   2   ユニバーサル基板 千石電商1F
ラグ板 立て4P1L   6   真空管ソケット両側、出力トランス片側 千石電商1F
ラグ板 平12x2P   2   整流+平滑部、マイナス電源部(3x3Pで足りる) 千石電商1F
ネジ付きスペーサー *1cm   2   整流+平滑部 千石電商1F
スペーサー *4cm   2   マイナス電源部(整流、平滑部から立てる) 千石電商1F
ネジ 3mm(50本入り) 85 1 85   西川電子部品1F
ナット 3mm(50個入り) 85 1 85   西川電子部品1F
ネジ 4mm(50本入り) 150 1 150 トランス固定用 西川電子部品1F
ナット 4mm(50個入り) 150 1 150 トランス固定用 西川電子部品1F
配線材           鈴喜デンキ(RD2F)
シールド線         ライン入力〜ボリューム〜グリッド配線 鈴喜デンキ(RD2F)
 
合計 ---  

この表は、その店で、その値段で買えることを保証したものではありません。また、すべて購入時の情報です。


●参考資料

ぺるけさん「情熱の真空管」、「Building My Very First Tube Amp講座」と掲示板
タムさん(田村さん)「タムさんのページ
宇多さん「宇多さんのホームページ
黒川達夫さん「はじめての真空管アンプ」(誠文堂新光社)

Wonder-Ranch by itokei