バランス型全段差動STAXイヤースピーカードライバー

2015.06.19
2015.06.24

●経緯

Mobile UA購入とSuper UA発表から始まったオーディオバランス化の最終段階です。

STAXイヤースピーカーは構造そのものがバランス駆動で、自作ドライバー回路も差動なだけに、入力をアンバランスのままにしておくのは惜しい。あと、最初の2段増幅バージョンから数えると、気づいたらもう10年もたっていて、以降に作ったものとはデザインやサイズが合わない。ということで、プリアンプ系と重ねて設置できる形にすることも目的とします。


●設計

回路については、基本的には3段増幅バージョン(旧作)を踏襲し、そのまま入力をバランス化します。

アンプ部回路図

電源部回路図

入力部分の構成はEL34アンプと同じです。出力トランスはないので、旧作と同様2.0MΩと10KΩで分圧した小さい方を戻しています。裸利得は約2500倍(旧作の実績)、負帰還約-12dB、56Kと180K+10Kによる分圧を含めて最終利得は500倍弱という想定です。また、ボリュームはプリアンプ使用を前提として付けていません。実際には、立って手を伸ばしてプリアンプのボリュームを動かすのすら面倒で、再生元であるMacのSuper UAコントロールパネルのスライダーで調整していますが。

定電流回路は、初段はIdss=1.5mAで選別した2SK30Aを、ドライブ段と出力段は簡単にLM317T+抵抗としました。

今回は、直列にして耐圧を稼いだ平滑用の電解コンデンサに、それぞれ高抵抗(1.0MΩ)を並列に追加しています。こうすることで、それぞれのコンデンサの電圧配分がおおむね均等になります(旧作でもやるべきだったこと)。

シャーシはプリアンプ(アンバランス版)の上に乗せるために、同サイズW300×D160としました。シャーシ上面は左半分に部品を集中させていますが、これは右側にSuper UAを乗せるためです。まあ乗せないとしても、電源トランスと真空管4本を均等に置いたら間延びするだけなので、これでいいのだ?


●製作

シャーシ加工はバランス型FET差動ヘッドホンアンプに続き、秋葉原ラジオデパートの地下の(株)奥澤に、今回はオンラインで依頼しました。もう自分で作る気しねえ。ソケット等の固定用以外のネジ穴は開けずに、すべて貼り付けボス(PETETという金属ナットが埋め込んであるやつ)を使いました。台座を貼る場所(約2cm四方)さえ確保できればこれは便利。

ただ、部品配置の設計が甘く、パネル取付型のヒューズホルダーの内側が電源トランスの端子と干渉する、ドライブ段のLラグどうしが触れ合うどころか押し合うというありさまです。前者は内側が短いタイプのヒューズホルダーに変えて、後者は間にテープを貼ってなんとか絶縁を確保しました……。

部品配置が甘いうえに、気分がフワフワしてたのか、いろいろ間違いもありました。初段とドライブ段の間は直結なのにグリッド抵抗を取り付けアースに配線していたり、アンプ回路のB1とB2を、それぞれ電源部のB2、B3につないだり、バイアスの配線を忘れたり……。それでも、初めて火を入れた時には何事もなく、音もすんなり出てくれたことは幸運でした。

バランス構成なので、アースのつなぎ方は特に気を使っていません。入力端子のGNDから太いスズめっき線を張り出させて、そこに集めました。

入力端子はノイトリック・レセプタクルのロック機構付きフォーンジャックにしました。XLRに変えることにしてもいいようにというのが理由ですが、ロックの解除ボタンが小さくて固くて押しにくいしめちゃめちゃ抜けにくいし、あと高い。まあそうそう抜き差しするものではないので、とりあえずは我慢。ここに2極フォーンプラグ〜RCAジャックのアダプタを挿しておけば、アンバランス入力になります。

出力のSTAX PROコネクタは旧作から切り取って流用しています。最初の製作時にコネクタを入手しようとSTAXに問い合わせたら、微妙に難色を示されたのですが、あれはなんだったんだろう。他の製作ページなどを読んでも、補修部品として1000円(税抜)で売ってくれますよと軽く書いてあるので、自分はたまたまだったのか……。他にも電源トランスPMC-100M、真空管が旧作からの流用です。初段の2SK30Aは、こちらはすでに分解済みだったPCL86プッシュプルアンプに残っていた物を流用です。頒布してもらったものではなく、自分でIdssだけ測ったやつだったような……。

初段+負帰還は、いつものIC用小基板にIC用ピンソケットを並べて差し込んでいるだけです。かなり高密度にできました。ただのジャンパにも、何となく0Ω抵抗器を使ってみたので余計に密集感があります。これ、後ではんだで埋めようといつも思うんだけど、やったためしがない。今回はドライブ段と出力段の定電流回路も同じ型の小基板に載せてみました。出力段でも10mA×バイアス12V=0.12Wなので放熱は不要です。

出力段のプレート負荷抵抗33KΩは、回路図上は3Wですが、1%にしたくて2Wを使っています。消費電力は約0.9Wです。また、電源部の2つの10Wも、こちらは単にでかいセメント抵抗が嫌で、酸金の5Wにしています。消費電力は2.5W前後です。


●結果

最終的な利得は約620倍と、想定よりちょっと大きくなりました。旧作からドライブ段と出力段の球を入れ換えたからとかあるのかな?

これでスピーカー、ダイナミック型ヘッドホン、エレクトロスタティック型ヘッドホンのバランス化が完了です。とても良い……気がしますよ!

もともとソフトンのDACと2代目プリアンプを重ねた場合にちょうどいい高さの超簡単な台を作り、その上に300Bアンプを置いていたのですが、バランス型ヘッドホンアンプ(兼プリ)、アンバランス型ヘッドホンアンプ(兼プリ)に今回のSTAXドライバーを重ねると約26cmになり、高さがたりないので、箱枠型のラックを新製しました。前面の統一感はまあいい感じではあります。ただ、置き場所の制約で仕方ないのですが、幅がギリギリで両側に指も入りません。

これでアンプについては、とりあえずやることがなくなりました。スピーカーを替えたいという希望はありつつも、ブックシェルフで密閉でというと選択肢はLS3/5A系以外はあんまりないというか、いずれにしてもおいそれと買える値段ではないという……。


●入力コネクタの変更

2015.06.24

ロック機構付きフォーンジャックが抜けにくいと書きましたが、結局、取り替えることにしました。新しいコネクタは、同じくノイトリックのコンボタイプというもので、TRSとXLRのどちらも挿せるというシロモノです。穴の位置やサイズは当然同じです。ただしTRSとXLRの端子は独立しているので、1とS(GND)、2とT(Hot)、3とR(Cold)どうしをスズメッキ線でつないでおくことで両対応としました。

元のフォーンジャックより安いし、XLRとの両対応だし、こういう端子でもそんなに工作しにくいということもないので、次からもこれ(のXLRラッチのあるやつ)にしましょう。次の予定はありませんが。

Wonder-Ranch by itokei