真空管アンプ、入り口

2002.12.02

●スタートライン

 きっかけとしては、あのAopenの「真空管搭載マザーボード」でした。といっても、発表のニュース記事は「おもしろい(変な)もの出したなー」ぐらいで、今のGIGABYTEマザーを買い換えるつもりもなし、特になにもなし、でした。

 少しして2002年の9月に、PC Watchの不定期?連載「槻ノ木隆のPC実験室」で、「真空管アンプ搭載マザー『Aopen AX4B533-TUBE』を試す」というのが載りました。単にコラムやレビューの記事が好きなので読みましたが、読んでるうちに、どこが琴線に触れたのか、ふつふつと「真空管なアンプを聴いてみたい」という気になりました。

 とはいえ、オーディオそのものが素人なので、どこで売ってる?高いんじゃない?など、まったく手がかりがありません。たぶん「真空管アンプ」などとしてGoogleで検索したと思いますが、実際、売っているアンプは金額が5桁後半からで、簡単には手が出ません。……完成品は。

 そうしているうち、三栄無線――10年以上前、シンセを鳴らしてたころ、よく前を通った(通っただけ)記憶が――のサイトが見つかりました。6BM8シングル(6BM8って何?シングルって何?(当時))のキットが19,800円。この金額ならだいじょうぶ。作るのも、まあ回路図どおり作るぐらいはだいじょうぶ。

 どうやらこれでよさそうだ。というところで、こんどはこのキットや「三栄無線」でいろいろ調べたところ、出てきたのがエレキットのTU-870です。こちらのほうが、製作記事や改造記事など、ずっと豊富です。しかも通販のみになってしまった三栄とはちがい、おなじみの若松通商などでも扱っているらしく(今にして思えば若松は高かった)、入手もしやすそうです。そうとわかると、翌日ぐらいには秋葉原でゲットしていたのでした。

 失敗しないようにということで、恐ろしくていねいな組立説明書を、ちゃんとそのとおり、チェックボックスにチェックを入れつつ、2晩かけて作りました。そしてスピーカーを接続……音が出た! 楽勝!(そりゃそうだ)。

 今思えば、なんだかユルい音だったような気もしますが、少なくともそれまで使っていたAurexのアンプ(友人からタダもらい)よりは「聴いていたい」ものでした。9月末には、勢いに乗って?タンノイの小型ブックシェルフスピーカーmX2-Mまで買ってます。その後、入力RCAピン、スピーカー端子をそれぞれ千石電商で買った金メッキのものに取り替えたりして、10月末ごろに里子に出してしまいました(早っ!)。


●シャーシ加工から、超三結アンプ

 少しさかのぼって9月末ごろ、すでに次のアンプを考え始めていました。TU-870に関するサイトを見ていると、いくつか出てきたのが「超三」というキーワードでした(正確には「超三極管結合」)。理屈はわからんがよさげな雰囲気だし、TU-870からの改造記事もある。よし、これ……とは思ったのですが、元が商品――回路図や基板のパターンは著作物――なだけに、改造といってもどこをどうすればいいという具体的な内容まで書いてない。回路図はあるから、それを見てパターンのどこを切った貼ったすればいいかはわかりそうだけどめんどくせー。

 そうこうしてるうちに、だんだん「いいや、工具も買って箱から自分で作れ」という気になってきました。工具をそろえるという覚悟さえしてしまえば、あとは堕ちるだけ(?)です。

 おそらくWebにある「6BM8を使った超三結アンプ」はほとんど見たでしょう、その中から「真空管は4本使う(見た目)」、「なんか出力トランス2階建てよさげ」という理由から、電源部とアンプ部のメインは宇多さんの「クッキー缶」、出力トランスの接続は(「2万円で超三アンプ〜」で有名な)山田さんの「クッキー缶(ニセモノ)」をコピーすることにしました。

 しかしまー、この時は妙に急いで工作してました。9月末の土曜日に部品をすべて買って、日曜日に穴あけして、月・火・水の夜で音出しまで行きました。次の土曜には、取っ手とヘッドホン用切り替え回路まで付けています。

 出てきた音はパワフルな感じ、あくまでも感じですが、TU-870よりこっち、ということで、交代です。しかし見た目(中も含めて)のみすぼらしさはたいへんなものが……。


●全段作動PPと、はじめてのロードラインへ

 そして、超三結アンプが一応の完成を見た10月の初旬には、すでに次を考えています。なんだ俺は……。

 Webを渡り歩いてみつけた、ぺるけさんが強力に推す「全段差動プッシュプル」。9月から黒川達夫さんの「はじめての真空管アンプ」(誠文堂新光社)などを読み始めて、「プッシュプル」も、ものすごくおおざっぱにはわかっていました。でもまあそこまでです。

 掲示板をのぞくと、なんでも「標準シャーシ」として、ぺるけさんの「Building My Very First Tube Amp講座」で扱うアンプに合わせて設計されたシャーシを頒布するらしい。しかも申し込み〆切間近。はじめは自分で作ろうかとも思っていましたが、USソケットの穴は直径3cm強、シャーシパンチを買うのか……。それに仕上げも、自分が作るのではずっと使う気にはならないのでは(超三結のデキを見つつ)と思い、さくっと申し込んでしまいました。

 シャーシが届くのは11月中旬です。それまでに部品をそろえるのはいいとして、なにも作らないのも寂しい(?)。先の「はじめての〜」や、ぺるけさんのサイトにある「私のアンプ設計マニュアル」などを読んで、だんだんわかった気になってきていたので、いっそ自分で回路から作ってみるか、と思いました。

 作るのはヘッドホンアンプ、それも単段増幅で作動。スピーカー用には標準シャーシで「全段差動」をこれから作るし、単段なら回路も簡単でヘッドホンの出力ぐらいなら出せるんではないかという、安直な予想です。


E182CC/7119(7044、5687)ヘッドホンアンプ

EL34/6CA7(KT88)全段差動プッシュプル"ベーシックアンプ"

Wonder-Ranch by itokei