EL34全段差動プッシュプル "ベーシックアンプ"
6AH4GTではなくEL34を使う場合の変更点: |
ぺるけさんの「Building My Very First Tube Amp講座」のサンプルとなっているアンプです(以下、←を参照しながらどうぞ)。11月初にシャーシが届き、その後ヘッドホンアンプと冬の原稿(笑)の完成を待って、12月半ばから作成に入りました。なお、はじめからEL34/6CA7を使うことを前提にしています(シャーシ到着より前にオークションでゲットしていた……)。
といっても、部品は11月初めにはすべてそろえてあったので、12月中旬の土日で一気に製作です。土曜日は電源部、のんびりと作った割にはちゃんと無負荷なりに電圧も出たし、マイナス電源での電源スイッチLEDもちゃんと点灯するし、楽勝感漂いまくりでした。しかし、イバラロードはこの後です。
日曜日はアンプ部の作成。ヘッドホンアンプでいい感じに見えた、小基板に抵抗などを集中させるのを、今回もやってみました。段間(出力段グリッド抵抗以外)と定電流を1枚に載せ、中央寄り真空管ソケットのネジからスペーサーで浮かせます。直接ソケットの端子に接続すればいいものも配線することになり、作業量としては実は面倒でした。
深夜まで及んで、とにかく音が出るところまではできたはず、というところで火を入れてみると、ん、音楽が流れます、が、それ以上に「ブー」とすごいノイズが……。ヒーターがアースに落ちてにない、スピーカーの片側がアースに落ちていない、にしてもここまででかいノイズは出ないはず。アースをチェックしていくと、なんと、アース母線(これは元の作例と同様)の両端のスペーサーが金属のもので、これとシャーシででかいループを作り電源トランスの真ん前で大きな口を開けていたのでした。とりあえず接触部でもあるネジをはずしてみたところ、ちゃんと鳴るようになったようです(深夜なので大きい音が出せない)。
翌日は負帰還の実装……の前に、前日出せなかったある程度の音量で聴いてみる。歯切れが良く、ものすごい空間の広がりが……広がり過ぎじゃないか? ふと気がつき、モノラル収録の曲を鳴らしてみると、やはり広がりが……出力の位相が左右で逆です。それはまあいいとしても、音がざらついています。こういうのが如実に現れるエンジェル隊の「ホロスコープ・ラプソディー」(笑)をかけてみると、もうガビガビ。
不審に思いつつも、負帰還の抵抗などを配置したうえで、いったんグリッド〜アース間を短絡して無帰還状態、これで聴いてみると……「ブー」復活! 無帰還なので発振ではないし……昨日の最後のは、配線をちょっと変えたらダメになるような微妙なバランスだったということか。
その後、特にアース回りの取り回しをいろいろ変えてみるが、ノイズの音色は、ブーやらバツバツやらギューやら、変化しても減ることはない。というのを5日ぐらいやってウンザリくんでした。そして、もう打つ手が見つからない、という時に、ふと気付きました。
■■■ ■■■ 電源トランス ■■■ +----------+ アース母線 □□ □□ □□ □□ 小基板 |
初めに、アース母線でループを作って豪快なノイズを発生させていましたが、小基板はその手前側、延長線上に配置していたのです。こいつも電源トランスの影響を受けていたのが原因となると……実装方法が根本的にダメだったということになります。これを両端寄りに移そう……と思っても、配線が短くて動かせないし、片側にはボリューム可変抵抗があって寄せきれません。
動かせないのでは、これが原因かどうかの確認もできませんが、動かすために配線をしなおすことを考えると、手間をかけたうえでやっぱりダメでしたとなるのが怖い……。考えた末、もういっきにアンプ部を作りなおそうということにしてしまいました。
そうと決まると、まずぺるけさんの作例の写真──ちゃんと鳴るという実績がある──から実体配線図をおこします。んー、さすがにムリがない感じです。作り直しといっても、電源部と、アンプ部も(面倒な)入力〜VR〜初段グリッドと、出力段〜出力トランスの配線は変える必要がないので、(元の小基板上と同じ)段間と定電流部の抵抗&定電流ダイオードのみ買い足してきました。穴を空けてバイアス調整用の可変抵抗を取り付けたラグと、カップリングコンデンサ(@480円)は流用します。
製作は、また深夜まで及んでしまいましたが、音は……あっさり鳴りました(無帰還)。前は音量にかかわらずブーやらブッブッやら鳴っていたので、小音量でもちゃんと音楽だけ聞こえるのがステキ。翌日、音量を上げてもちゃんと鳴ってます。もともと小基板を浮かせた状態で、そこに真空管ソケットなどから配線するため、空中を立体的に線が舞う状態でしたが、これがなくなって基本的にシャーシ(裏)面に線を這わせるようになったので、見た目にもかえってすっきりしたぐらいです。
その後、負帰還部も実装して、いったん終了。あとは出力段のグリッド抵抗4本に、「ON/OFFスイッチ+470KΩ直列」をそれぞれ並列に入れて、最大グリッド抵抗の低いKT88対応にする予定。ただKT88のUL接続だとバイアスが深すぎて、LM317Tの両端電圧が高くなりすぎるから、普通に三極管結合に戻すか、あるいはカソードに120Ω5Wぐらいの抵抗を入れるか……。
しかし、EL34が4本って、あったかいネ(ヒーター合計約38W)。
当初の予定どおり、現在はKT88(electro-harmonix製、マーキングはリンク先と異なる)を使っています。なぜKT88かというと、……見た目、迫力があるからなんですが(EL34と聴き比べしたわけではない)。
KT88を使うにあたって気を付けるEL34との差異というと、グリッド抵抗値を大きくできないこと、バイアスが深くなること、三極管結合で28Vぐらい、UL接続(Ep-Ip図は「40% TAP」とある)では40Vを越えるようです。あくまでもデータシート上は……。
まずグリッド抵抗については、EL34の時点で書いていたように、出力段グリッド抵抗470KΩを「1本⇔2本並列」で切り替えられるようにスイッチ&抵抗を追加します。オープンにならないように、スイッチは下記のように入れます。
--Cc--+----G<KT88> | +--+ | | | R470K R470K | | SWITCH | | +--+ | E
バイアスが深くなることについては、実際には、バイアスが深くなればその分P-K電圧が下がる=バイアスが浅くなる、そのバランスがとれたポイントが動作点になるんだと思いますが、いずれにしてもLM317TのIN〜OUT耐圧35Vに対してちょっときびしそう。ということで、LM317TのINに直列に抵抗を入れて、電圧を負担してもらうことにします。
電流は片チャンネルで約83mA、15Vぐらい落とせば、たとえバイアスが-45VになってもLM317Tにかかる電圧は30Vですむ、ということで、抵抗値は180Ωとしました。
さて、EL34の場合でP-K間電圧は248V、K-G間の電位差(=バイアス)は20V、これをKT88に差し替えてみて……K-G間は25Vぐらいにしかなりませんでした。あれ?いくら誤差とか固体差とはいってもUL接続でこれは浅すぎない? 三極管結合であればじゅうぶん納得がいくのですが……。UL接続の特性図の「40% TAP」という、それよりももっと三結寄りということなのかな。とりあえず調子良く鳴ってくれてるのでいいんだけど。
とまあ、これは実は1月半ばにはおわっていました。そろそろEL34に戻して聴き比べてみようかな。