ヘッドホンアンプVersion 1.1
7119単段差動プッシュプルヘッドホンアンプ

2002.12.05

Version 1.0 単段、一体型。トランスの誘導ノイズに苦しめられる
Version 1.1 電源部とアンプ部を分割。ノイズ問題解消だが……
Version 2.0 FETを追加し、2段増幅に。ひとまず完成
Version 2.1 出力トランスを豪華に換装


写真はPhilipsECG 5687WB


●回路図

Version 1.1

Ep=125V Ip=14mA Rp=5K Eg=-4V

IN>--+               +------+
|    |               P      |  8K  8
|  VR50K<--+------G<7119>   +---++++--+-->OUT
|    |     |         K          ||||  |
~    ~   R560K       |          ||||  |
           |    +----+    B+>---+||| R27/1W
           ~    |    |          ||||  |
+----A<LM317T>I-+    K          ||||  |
|         O      +G<7119>   +---++++--+-->OUT
+-R22-R22-+      |   P      | ITPP-3W |
|                ~   +------+         ~
~

   +-SW-+     120V    (154V)                                      (130V)
>--+-SK-+--++++--+->|-+--R24/1W--+--R130/2W-+--R130/2W-+--R130/2W-+-----+-->B+
        |  ||||  +-|<-)+         |          |          |          |     |
AC100V  |  ||||       ||     C100/200   C100/200   C100/200   C100/200 R470K
        |  ||||  +->|-+|         |          |          |          |     |
>-FUSE-+)--++++--+-|<--+---------+----------+----------+----------+-----+--<E
   1A  || Z-02ES      (0V)                                        (0V)
       ||
       ||     6.3V
       |+--++++----+--+
       |   ||||    |  | HEATER
       |   ||||    >  > 640mA*2(7119)
       |   ||||    |  | 900mA*2(5687,7044)
       +---++++----+--+
          J-632    |
                   ~

-|<-:ダイオード Rxx:抵抗(Ω) Cxx/yy:コンデンサ(μF/耐圧V) ~:アース SW:スイッチ SK:スパークキラー


 どうせ作り直すので、もともとAC 100Vを直接使おうとして設定した動作点も、トランスの二次側120Vを前提に見直します。ついでに入力トランスも巻線比の大きいものを普通に一次・二次に接続してゲインを稼ぎます(が……)。

 電源部・アンプ部分離ということで、シャーシがふたつ必要なわけですが、タカチのYM-180(アンプ部)にリードのPS-13(電源部)という組み合わせが、幅・奥行きが同じ、前面・側面の色も同じ、アンプ部の高さが部品にはきつそうだけどコンパクトで良い。しかも、電源部の側面〜上面は、漏洩磁束をふせぐという鉄製と、もう完璧。幅が1cm、奥行きが5cm、前バージョンより短くなって、かえってコンパクト感がよくなったぐらい?

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 上下の接続は→のような端子の、直径1.5cmぐらいの丸い樹脂製のコネクタを使いました。名前がわかりません。

 さて、実際に作ってみて、電源部の抵抗を24+130+130+130(Ω)で構成してありますが、アンプ部の入り口でB〜E電圧を測ってみると125V程度と、想定よりも5Vぐらい低い。トランスの出口でAC電圧を測ってみると、なんと117〜8Vしかない、てことはブリッジ整流直後で150V。家庭用電源はちゃんと100V出ているし……。うーん、トランスの二次側は多めに出るもんだと思ってたので少しびっくり。そんなわけで、冒頭の回路図の154Vというのは「理論値」(よりちょっと少ないぐらい)です。

 はじめは、宇多さんの「6BQ5 Semi-STC pp」にあった、サンスイのトランスST-75の使い方――4:1の巻き線比を逆に使い、高抵抗で中点を作る――をそのままコピーしていましたが、明らかに、前のST-17Aのオートトランス式のほうが低音が出る(ここが、ST-75を使う場面で宇多さんが書いている「一次二次を逆にして若干通過帯域幅を損ねても(ゲインが)4倍」、「低域が若干弱く感じられるものの」のことだと思う)ので、前と同じに戻しました。

 音のほうは……前と変わりまへん!って、そりゃそうなんですが。しかし、例えばカンゼル/シンシナティ響/テラークの「1812」(買ってみた)なんて、明らかに、「大砲」を入れる(CDのレンジに収める)ためにオーケストラの音を押さえてあったりして、するとやっぱりこの音量じゃ足りないです。「WWF The Music Vol.5」なんかはよゆーなんですが……。

 じゃあハムノイズは、しかし前より大きくなっています。ただ、電源ON直後は聞こえない、ボリュームに反応する、というのはちがいました。前と同じように、アンプ部を電源部の上で動かしてみると、やっぱりノイズ量が変化します。

 このシャーシでも同じなのか、と思ってあきらめかけた時に、ふと気づきました。アンプ部には、出力トランスだけでなく、入力トランスもあったのです。これを電源トランスに近づけると、やっぱりノイズが大きくなります。シャーシを変えて、トランス間の相対位置が変わって、影響される部分も変わったようです。なんてことだ。てことで速攻ではずしたところ、ほぼ皆無(気にならない)になりました。音質としては、ビシッとしまりが出たように思います。トランスを入れて広がりが出たと思っていたのは、単に散漫だったということ?


 しかし、やはり音量が小さいというのはいかんです。よって、単段ではなくFETドライブ(Version 2.0)に踏み切ります。もちろん、FETも差動です。筐体はそのままでいいですが、電源の種類が増えるから接続方法を変えないと。


●部品表

部品名 商品名(例)
*スペック
単価 小計 備考 購入店(例)
RD:東京ラジオデパート
RC:秋葉原ラジオセンター
 
シャーシ(アンプ部) タカチYM-180 930 1 930 W13cm、H4cm、D18cm エスエス無線(RD2F)
シャーシ(電源部) リードPS-13 1,040 1 1,040 W13cm、H8cm、D18cm
付属ゴム足(はめ込み)をそのまま使用
エスエス無線(RD2F)
ゴム足 3mmネジ用 15 4 60   鈴喜デンキ(RD2F)
電源部
電源ケーブル 2mプラグ付き 150 1 150   鈴喜デンキ(RD2F)
電源ケーブルの留め   20 1 20   鈴喜デンキ(RD2F)
電源スイッチ   320 1 320   鈴喜デンキ(RD2F)
ヒューズ *1.0A 30 1 30   千石電商B1F
ヒューズホルダー   100 1 100   千石電商B1F
スパークキラー 岡谷電機産業S120033
*150V以上
80 1 80   日の丸無線(RC1F)
トランス(A電源) 東栄変成器J-632
*100V-6.3V 2A以上
860 1 860   東栄変成器(RC1F)
トランス(B電源) 東栄変成器Z-02ES
*100V-120V 100mA以上
1,700 1 1,700   東栄変成器(RC1F)
整流ダイオード 1N4007
*整流用、逆耐圧150V以上
15 4 60 10本150円 1N4007は逆耐圧1000V 千石電商2F
R *24Ω/1W 30 1 30   海神無線(RD2F)
R *130Ω/2W 30 3 90   海神無線(RD2F)
R *470KΩ/1W 30 1 30   海神無線(RD2F)
C *電解100μF/200V 300 4 1,200 耐圧200Vが入手しにくい場合は250V×1+160V×3 海神無線(RD2F)
接続コネクタ
*4端子以上
220 2 440 オスメスで一組 海神無線(RD2F)
アンプ部
入力端子 *RCAメス赤白各1 150 2 300   千石電商2F
VRボリューム用 NOBLE RV24YG
*6mm軸50KΩAカーブ2連
1,600 1 1,600   ナリタ秋葉原ラジオストアー
VRボリューム用つまみ *6mm軸 640 1 640 φ4cmアルミ 鈴蘭堂(RD2F)
入力トランス サンスイST-17A 370 2 740   トヨデン秋葉原ラジオストアー
R *22Ω1%/1/2W 30 4 120 1%がない場合は選別 海神無線(RD2F)
R *27Ω/1W 30 2 60   海神無線(RD2F)
三端子レギュレータ LM317T 100 2 200   千石電商2F
絶縁シート 三端子レギュレータ用 10 2 20   千石電商2F
ワッシャー 三端子レギュレータ用 5 2 10   千石電商2F
真空管 7119(NATIONAL) 2,500 2 5,000 2,500円/1本 クラシックコンポーネンツ
真空管 5687(PhilipsECG)       1,000円/1本 クラシックコンポーネンツ
真空管 E182CC(Mullard)       2,800円/1本 アムトランス(RC1F)
真空管 7044(GE)       1,200円/1本 春日無線変圧器(ニュー秋葉原センター)
初段管ソケット *MT9ピン用 360 2 720   クラシックコンポーネンツ
トランス(出力) イチカワITPP-3W
*8KΩ-8Ωプッシュプル用
1,800 2 3,600 1,800円/1個 イチカワ(通販のみ)
トランス(出力) 東栄変成器OPT-10P
*8KΩ-8Ωプッシュプル用
      2,500円/1個 東栄変成器(RC1F)
ヘッドホン端子 *ステレオ 110 1 110   千石電商2F
その他
ラグ板 立て4P1L   6   真空管ソケット両側、出力トランス片側 千石電商1F
ラグ板 平12x2P   1   整流+平滑部 千石電商1F
スペーサー 1cm   2   整流+平滑部 千石電商1F
ネジ 3mm(50本入り) 85 1 85   西川電子部品1F
ナット 3mm(50個入り) 85 1 85   西川電子部品1F
ネジ 4mm(50本入り) 150 1 150 トランス固定用 西川電子部品1F
ナット 4mm(50個入り) 150 1 150 トランス固定用 西川電子部品1F
配線材           鈴喜デンキ(RD2F)
シールド線         ライン入力〜ボリューム〜グリッド配線 鈴喜デンキ(RD2F)
 
合計 ---  

この表は、その店で、その値段で買えることを保証したものではありません。また、すべて購入時の情報です。


●参考資料

ぺるけさん「情熱の真空管」、「Building My Very First Tube Amp講座」と掲示板
タムさん(田村さん)「タムさんのページ
宇多さん「宇多さんのホームページ
黒川達夫さん「はじめての真空管アンプ」(誠文堂新光社)

Wonder-Ranch by itokei