E182CC差動ラインプリアンプ

2005.10.13

●構想

 もともと6922差動ラインプリアンプは、音としてはまったく問題なかったんですが、出力セレクタの作りの問題で、選択されていない側のパワーアンプにノイズが乗ったり、アースごと切り替え&ロータリースイッチ前面マウントで線がたいへんなことになっていたり、あと外見がアレだったりするので、作り直すことにしました。ソフトンのDACと重ねられるようにしたいなーというのもあります


●設計

 上記の条件より、幅30cm×奥20cmで球を中に収められる程度の高さがあるシャーシをまず探すことにしました。タカチYM-300は高さが5cmしかない(中で球を寝かせるという手もあるが)うえに強度が足りない感じ。アイデアルのCE-30というのもあって、これはサイズはいいけど、内部に部品実装用のサブボードを持たないのが残念。でもこれかなぁとか思っていたら、鈴蘭堂FM-2Sというのが見つかりました。これなら中にサブボードがあるし、外装もたいへん頑丈そうです。値段が3倍ぐらいしますが……これにしましょう。前面パネルがすき間なく2枚重ねなのがめんどくさそうではありますが(ていうかめんどくさい)。

 回路としては、6922版とまったくといっていいほど同じです。ただアンプ回路部分は、真空管ソケットがスペーサーによる空中実装からパネル直づけに変わるため作り直しです。そこでふと、じゃあどうせならE182CC(=7119)用にしてしまおうと思いました。もともと6922版では、選んだシャーシの高さが足りないので6922(≒6DJ8)にしたという経緯があります。E182CC/7119は、妙に高額(@2,000〜2,800円)なのをのぞけば、内部抵抗が低く、たいへん良い球です。電源回路を作り直す気がまったくないので、動作点は6922と同じでどうか……ちょっとだけバイアスが深くなる程度でまったくノー問題です。ただμが低いので利得が減りますが、もともと必要としていないし、NFBのおかげでそう変わらないはずです。なお、6922/6DJ8系とE182CC/7119のピン配置には互換性がない(半分同じ)ため、そのままでの差し替えはできません。5687や7044は、E182CCと同じピン配置ですがヒーター電流大食らい(5687 1本=E182CC 1.5本=6922 3本)なので、このトランスではムリです。

6922   | 2P 2G 2K H H 1P 1G 1K IS | H-H間6.3V、ISはアースに接続
E182CC | 2P 2G 2K H H 1K 1G HC 1P | H-H間12.6V、H-HC間それぞれ6.3V

 しかし、上の段落で書いたことは、実はそう簡単なことではなかったのでした=後述。


●製作

 今回の目的のひとつであるセレクタの再構成用に、ロータリースイッチはALPSの少し大きめの(青じゃないやつ)にしました。端子が比較的しっかりしていて、がちこんがちこんした感触がよさげです。切り替えをいくつにするか、前のは入力×4+出力+2でしたが、せっかくなので?出力を3に増やすことにしました。そして入出力1系統ずつ前面に回しましょう。入力はポータブルプレイヤー……は持ってないのでG5の前面からの入力に、出力はパワーアンプを手元でテストするのに便利です。きっと。多少なりとも配線をすっきりさせるため、セレクタは初のシャフト延長してみました。

 プリアンプ本体部分は、基本方針としては電源部はそのまま移植、アンプ部は作り直しでしたが、差動の定電流ダイオードだけは使い回してます。定電流ダイオード3本×ステレオで、金と選別の手間がかかっているので、ちゃんと線をはずして残ったハンダを吸い取って再利用です。

 ハンダ付けは丸1週間かけてのんびりと。やはり(4in+3out)×(左+右+LED)の配線はめちゃめちゃめんどくさいのでした。そのへんを最後土曜日丸1日がかりで終えて、さて音出し。……ダメです。

1. 左の音が出ない
2. 右から「ブーン」という音がする

 ……1は、どうやら100KΩ抵抗(Philips金属皮膜1/2W)の側面がLラグ中央端子と接触し、それで出力がシャーシ=アースとショートしていたためのようです。ラグの端子をぐいっと曲げて引き離したら音が出るように……左右とも2になっちゃいました。


●トラブルシュート

 ブーンの特徴ですが、ボリューム位置は無関係、球の左右入れ替えは無変化、ヒーターが暖まると出てくる、本来の音もいっしょに出ている、というのと、球を片方のみ挿した場合は出ない、というのがありました。E182CCは6.3Vの場合で640mAと、6922の300mAの倍以上ヒーター電流を食い、そのためヒーター電圧が5.9〜6.0Vぐらいしか出ないというのが計測してわかりましたが、この程度はまったく許容範囲のはずです(ヒーター電圧としては……)。セレクタがらみでアンプ本体回路以外の引き回しがたいへんなことになっていますが、それが原因でもないようです。しかたなく元の6922に戻して(戻しやすくしていた)みたら、あっさりきれいな音になってしまいました。うーん。これで今までどおり、でもいいんだけど、チトつまらないです。

 という話をぺるけさんとこの掲示板に書いたところ、ヒーター電流供給増加により整流電圧が下がりすぎて、定電圧回路で使っているLM317Tの動作がおかしくなっているのではないか、という指摘を受けました。再度E182CC配線に戻して電圧を測ったところ、6922でダイオード整流直後9.7V/ヒーター6.4V出ていたのが、E182CCでは8.3V/6.0Vになっています。LM317Tの定格を改めて確認したところ、Vin-Vout電圧は最低でも3V必要なようで、8.3V-6.0V=2.3Vでは足りません。そこで、お試しで出力電圧(=ヒーター電圧)が4.6Vになる抵抗値に変更したところ、すっかりきれいな音になってしまいました。

 改めて、整流直後に最低でも8.3Vは出るだろうとして、それからマイナス3Vのヒーター電圧5.3Vとなるように低電圧回路の抵抗値を調整(820Ω→100Ω+560Ω直列)。結果として整流直後8.5V強、ヒーター電圧5.4V弱が出るようになりました。さすがにこのヒーター電圧は定格外ですが、音はちゃんと出てるし、まー低い分にはだいじょうぶでしょう。

 今回は、電源トランスを変える気がないので、こんな苦肉の策になってしまいましたが、まともにやるならもっと余裕のあるヒータートランス(8V〜、3A〜)を用意したほうがいいでしょう。その場合は6922版と同じ回路でいけるはずです。ひょっとしたらこのトランスでも、マイナス回路はそのまま、ヒーターはトランスから直接、抵抗(1.3〜1.5Ω/10W)による電圧ドロップを通して交流点火すればいけるかもしれません。なお、もともと小さなヒートシンクを取り付けていただけのLM317Tは、最大電流1.5Aというのに今さらながら気づいたので、今回ついでにシャーシ直づけに変更しました。


●再調整(2005.10.13追記)

 上記のヒーター電圧の問題を掲示板で相談していた中で、三端子レギュレータの「低ドロップ型」LT1085CTというのを教えてもらいました。LM317Tでは入力電圧に対して出力電圧が3V以上低くないといけないという制限があるのですが、これが1Vでよいというものだそうです。さっそく千石電商の通販でゲット……1,200円もするー。

 端子の意味などはLM317Tと同じなので、そのまま取り替え。定電圧の抵抗値も6922版と同じに戻しました。電源を入れてヒーター電圧を測ると、6.4V、計算どおりです(計算上6.38Vぐらい)。鳴らしてもノイズは入らないし、問題な……またブーンと鳴りました。常時というわけではなく、部屋のレーザープリンタで印刷すると確実に鳴ることから、電源電圧の変動に耐えられないようです。そこで820Ωに12KΩを並列に追加して、定格範囲内6.1V弱となるようにしてみました。これで問題なさそうです。

 まあ、このトランスでこの球を使うなら、やっぱりヒーターには交流のまま抵抗ドロップすべきでしょう。8Vから6.3V、640mA×2を得るには、ヒーターと直列に1.33Ω……1.5Ω/10Wか0.68Ω/5W×2を入れるのがいいでしょう。ヘッドホンアンプで交流点火で、ハムとかなかったんで交流でもまずノー問題です。意地張って高くついたですよ……。


●仕上げ

 前面は、ボリュームとセレクタのつまみに合わせてアルミ板を飾りに付けました。特にLEDの取り付け部分がきたないので隠さないといけません。なんだかこういうごついのが芸風になってきた感が……。背面は特にありませんが、サービスコンセント(スイッチ非連動)を2個も付けてしまいました。メイン&ヘッドホンアンプともここに入れてしまうと便利ですよ。

 さて次は、メインの6A3/300Bアンプをモノラルツイン化するという計画もなくはないけど……。あとはヘッドホンアンプ(STAXじゃないほう)の全真空管化+差動出力段独立定電流化、とか。うちの環境で数を増やしても意味がないので、あとは今回みたいに置き換えていくしかないのでした。

Wonder-Ranch by itokei