バランス型6DE7全段差動プッシュプルアンプ

2021.08.19


●経緯

 前作フローティングOPTの6DE7アンプはいい音を出してはいますが、どうも片側が不安定で音が出なくなったりすることがあります。測定してみると、片側のプレート電位が想定より50Vくらい低かったりしますが、そうやって調べてる内は例えば動作点がドリフトするとかそういうことも無く、よくわからなかったというのが正直なところです。

 でも6DE7は良さそうなので、いっそのこと「普通の全段差動」にしようと考えました。初段、ドライブ段は今までと同じ、出力段も動作点は同じままで、トランス負荷&共通カソード定電流にします。


●設計

 問題は、ほしい出力段のB電圧が低すぎるのと、使わなくなる定電流回路が乗っている大きなヒートシンクをデザイン的にどうするかですが……ヒートシンクは存置して、そこに定電流回路と、あと変更後の出力段B電源回路のMOSFET周辺も載せることで、一挙解決することにしました。電源は250V巻き線→整流直後約315Vから235Vくらいを取り出すため80Vくらい(約10W!)落とすことになり、カソードに入れる定電流回路(こちらは片側1.3Wくらい)ともども放熱が必要なのですが、もともと出力段負荷(約20W)の放熱を担っていたので余裕です。

 そう、できれば電源トランスは200〜220Vくらい(とドライブ段の250V)の巻き線があるものがベストなのです。

 プッシュプルバランスは、DCバランスサーボをそのまま使うことにしました。フローティングOPTなら出力トランス1次側「電位」差検出で良かったのですが、通常のトランス負荷の場合はセンタータップの両側の「電流」値を揃えたい、そのために共通カソード両側に小抵抗を入れる場合が多いです。出力トランス1次側のDC抵抗値のバランスが揃っていれば前者のままで問題ないですが、カソード小抵抗方式に変えています。なおDCバランスサーボの入力は、前のプレートから取り出す方式とはプッシュプルの逆側となります。

6DE7(ドライブ段)ロードライン(前作と同じ)

6DE7(出力段)ロードライン(前作と同じ)

アンプ部回路(4.7Ωは手元になくて10Ωを2本並列にした)

DCバランスサーボ回路

電源回路

 今までの、ヒートシンクに乗った定電流回路は、せっかく作ったので残して何かに流用できないか……これ以上アンプを増やしてもしょうがないので、ヒートシンクだけ流用して、そのネジ穴を利用することにします。というか新規に作るつもりでヒートシンクの新品を注文したものの、ネジ目を切るのが面倒なので……。


●製作

 お盆休みの序盤にひさしぶりに秋葉原に出て、さくっと40分で抵抗など買い物。帰ってからヒートシンクは千石電商(通販)で取り寄せ……は上記のとおり今までのを使い回すので不要となりました。

 大きく変わる電源回路はもともとシャーシの上に出してあったので、改造はやりやすかったです。ただしMOSFETへの配線はちょっと長い距離を引き回すことになりました。

 工作的に面倒だったのは、DCバランスサーボの2.2MΩを引っこ抜いてカソードからの配線をするとこくらいでした。あの小基板は、はんだ面が汚なくなりすぎた……。そんなこんなで、休みの最後の土日の、それぞれ夕方くらいから夜にかけて2日でできました。


●結果

 電源電圧は想定どおり。出力段の直流動作点を見てみると、K-Pは205Vで想定どおりですが、グリッドバイアスK-Gは-20Vくらいと、6Vくらい浅い、つまり実際のEp-Ip特性がデータシートよりも倒れ気味ということですね。まあそんなもんかという気もします。問題はありません。

 動作も、まだ大して聞いていませんが、安定しているようです。実績ある回路構成という安心感の方が大きいかもしれません。

 写真は、外見がほぼ変わっていないので少しだけ。

Wonder-Ranch by itokei