8cmフルレンジ密閉型タンデムプッシュプルスピーカー

2014.09.15

●経緯

 オーディオテクニカのイヤホンATH-CKR10を買いました。これは、ダイナミックスピーカーは往路と復路で動作が異なる(復路が鈍い)から、2つのドライバの振動版を向い合せで密閉し※、一方に逆相の信号を入れることでその違いを打ち消す(つまり一種の差動?)、というものらしいです

 ※作ってから商品サイトを見直したら、別に「密閉」はしていませんでした……ということは、このスピーカーはCKR10とはコンセプトがぜんぜん異なるということに……。

 とりあえず音はダイナミック型としてはいい感じだったので、これをまねてスピーカーとして作ってみようと思いました。


●設計

 いわゆる「タンデム」にあたるのかどうか、Webを検索すると、自作では2ユニットを同じ向きに配置し同相で動かす例や、コイズミ無線のキットでは径が異なるユニットを使っていたりで、向い合せ(あるいは背中合わせ)の例は少数派のようです。まあタンデムでいいや。

 考え方としては、表側のユニットがエンクロージャー内の空気のバネに対して動きやすいように内側のユニットが補助する、というよりは、2つのユニットがお互いを制し合う、1つの(ベターな?)ユニットとして動くということです。

 サイズ等は、放置されている塩ビ管スピーカーのDIY AUDIO SA/F80AMGの流用を前提にします。CKR10みたいにユニットの表側どうしを密閉すれば、中の空気が少なくバネとしての効果が小さくなり、より差動に近い動作ができるんだと思いますが(ていうか振動版どうしを連結しちゃえばいい?)、さすがに巨大なボイスコイル部分を外に向ける気はないので、背中合わせにして、その空間が最小になるように寸法を取っています。

 2台のユニットは、ターミナルから並列で接続します。SA/F80AMGは8Ωなので、4Ωスピーカーということになります。うちのアンプはターゲットがLS3/5Aの11Ωなので、出力トランスは8Ω端子を使っているのですが、まあこっちはそのままで。

 このタンデムの部分だけで独立させて、内蔵側ユニットのさらに後ろ側には別の箱を着脱可能としました。なお、物理的というか音響を考慮してのエンクロージャー設計はしていません。

 板材の切り出しは下記のとおり、1台につき450mm×300mmで15mm厚と12mm厚が1枚ずつです。ただしこの図では、タンデム部と後ろ側とを連結するためのしくみは書かれていません(そこは自分でやったので)。

 これは作っている途中で思いついて追加しましたが、内蔵ユニットの後ろ側の圧力が高くならないように、小さい空気穴(直径5mm×2つ)をあけることにしました(CKR10も外側に穴があいている)。あくまで「密閉型」なので、ここからは空気だけ抜けて音は抜けないでほしいのですが、試してダメだったら埋めましょう。


●製作

 箱の材質はMDFです。上記の切り出し図のとおり東急ハンズ新宿店で加工してもらおうとしたら、売り場に450×300で15mmという板材がなく、工房受付の人が910×450の板材を半分に切って(板の値段も半額分)、そこから2台分切り出す配置変更もやってもらえて、たいへん助かりました(&お手数をおかけしました……)。大きい円は、おそらく切り口がバリバリにならないようにするために、いちいち板の両面から厚さの半分まで切り込みを入れているという、なんかわざわざ新宿まで出て4時間待って良かったです。

こんな切り落とし

 組み立ては、基本的には普通の速乾タイプの木工用接着剤ですが、すべてを接着してしまうと何かあった時に困ること(ユニット交換も想定)、木ネジでは作りきりにするしかないので、ユニットやターミナルの固定、前後の箱の接続には、鬼目ナット(ムラコシの商標らしい)というのを初めて使ってみました。これはとても良い。木ネジは力加減の問題があっていやなので、これからも積極的に使いましょう(どこで?)。

 ユニットの取り付けなど接着しない部品の間には、密閉度を上げるためにCRスポンジシートというのを挟んでいます。先にタンデム部を組み立ててみて、ユニットとターミナルを取り付けた状態で一方のユニットの振動版を指で押すと、反対側のユニットの振動版が前に出てきます。前に出た後、すーと元の位置に戻っていくので気密は完全ではありませんが、いい感じです。

 後ろ側にはニードルフェルトと水槽用フィルターを吸音材として入れてあります。

根拠はありません

 エンクロージャーの表面は、単に面倒なので、紙やすりをかけただけです。本当は接着剤のはみ出しとかがシミ状になっているから塗った方がいいんですが……。


●完成

 できてみると……タンデム部が125mm、後部が315mm、全長440mmで、なんか長い。

横から

分離状態

 たまたま板材の切り出した残りに110×110×15という板があったので、たいこ鋲を刺して簡単な3点支持の台を作って、Rogers LS3/5Aの外側に置いてみました。鳴らしてみると……なんかいい。密閉なので低音がゆるいということもなく、でも足りないということもなく、ていうかほんとに8cmユニットか?というくらいちゃんと出てます。いやおどろいた。

 少なくとも、いきなり「そりゃ8cmの自作じゃこんなもんだよねー」で完成しておしまいって感じでもない、なんかいいもんできた気がするので、しばらくこれで聴いて、そしてRogers LS3/5Aに戻したらどうなるか……。

Wonder-Ranch by itokei